救命救急病棟やICU、HCUなど、急を要する治療を行う施設をもつ急性期病院。
薬剤師にも高度な知識と経験が求められるハードな職場環境ですが、スキルアップのために急性期病院を就職先として志望する薬剤師も多いです。
高度な医療を提供する急性期病院は、薬剤師として幅広い経験を積むためには最適な環境です。
仕事はきついですが、やりがいを感じることができるでしょう。
一方で、他の職場と比べてもハードな職場環境であり、仕事の厳しさに耐えかねて辞めたくなってしまう薬剤師も多いです。
この記事では、急性期病院の薬剤師を辞めたいと思ったときに後悔しないための対策と、多くの急性期病院の薬剤師が辞めたいと思う理由について解説します。

調剤薬局の薬剤師として5年、病院薬剤師として10年勤務。
現在は病院薬剤師として働きながら面接官なども担当。
急性期病院の薬剤師を辞めたい時の対策とは?
急性期病院の薬剤師を辞めたいと思ったとき、そのまま勢いで辞めてしまうと後悔してしまう可能性があります。
後悔しない選択をするために、急性期病院の薬剤師を辞めたいと思ったときにするべきことをまとめました。
- 休養をとる
- 働き方を変える
- 次の仕事を探しておく
ひとつずつ詳しく解説していきますね。
休養を取る
急性期病院のハードな業務に疲弊している場合は、まずはしっかりと心と身体を休めましょう。
仕事を辞めたいと思うほどに心身が疲弊した状態では、冷静な判断はできません。
正常ではない精神状態で「退職」という人生を大きく左右する決断をしてしまうと、あとになって後悔する可能性があります。
後悔しない選択をするためにも、十分な休養をとり、心と身体を休めましょう。
有給を消化して休養をとった上で、それでもなお急性期病院の薬剤師を辞めたいという気持ちが変わらなければ、退職を決断してもいいと思います。
休養をとり、心と身体が回復すれば、また急性期病院の薬剤師として頑張ろうという気持ちになれるかもしれません。
体調を崩しているのであれば、休職するという選択肢もあります。
まずは、日々の仕事で疲れ切った心と身体を十分に休ませて、冷静に判断できる状態を取り戻しましょう。
働き方を変える
薬剤師として活躍できる職場は急性期病院だけではありません。
急性期病院の薬剤師の仕事をつらいと感じているのであれば、働き方を変えるという選択肢もあります。
ドラッグストアや薬局には、夜勤や日曜出勤がない職場もたくさんあり、ワークライフバランスを重視した働き方ができます。
一般的に、ドラッグストアや薬局に勤める薬剤師の方が、病院薬剤師よりも年収は高いです。
パートや派遣として、時間に余裕をもって働くのもおすすめです。
働く時間や日数を柔軟に変えることができるため、正社員で働くよりもプライベートな時間を確保することができます。
派遣であれば、数か月働いて、数か月休んでリフレッシュするといった働き方も可能です。
小さい子どもがいて労働時間に制約のあるママ薬剤師でも働きやすい雇用形態です。
次の仕事を探しておく
急性期病院の仕事を辞める前に、次の職場の候補となる求人を探しておくのがおすすめです。
次の仕事がまったく決まっていない状態で仕事を辞めてしまうと、収入が途絶えてしまうため、心に焦りが生じます。
退職後に焦って仕事を探そうとすると、職場のリサーチ不足のまま転職してしまい、転職先でもまた悩みを抱えてしまうといった状況になりかねません。
すぐに転職しないという場合でも、どんな求人があるのか、自分の条件に合う求人があるのかを確認しておきましょう。
急性期病院の薬剤師を辞めたいなと思ったら、まずは薬剤師専門の転職エージェントに登録するのがおすすめです。
転職エージェントに登録すると、専任のアドバイザーが転職活動をサポートしてくれます。
最新の薬剤師の求人動向の情報や、求人票を見るだけではわかりづらい職場の内部事情なども教えてくれるため、安心して転職活動を進められます。
どんな求人があるのかを確認した上で、急性期病院の薬剤師を続けるという決断をしても問題ありません。
転職エージェントのサービスは完全無料で利用できるので、気軽に登録してみましょう。
急性期病院の薬剤師を辞めたい理由とは?
急性期病院の薬剤師が辞めたいと思う理由をまとめました。
- 薬剤部内の人間関係がつらい
- 医師や看護師との人間関係がつらい
- 給与が安い
- 業務内容がきつい
- ライフワークバランスが崩れる
- 夜勤がある
- 妊娠・出産や育児との両立が難しい
多くの急性期病院の薬剤師が給与面や仕事とプライベートの両立の難しさに悩みを抱えています。
薬剤部内の人間関係がつらい
病院の薬剤部は異動もほとんどなく、閉鎖的です。
急を要する患者さんに対応するという急性期病院の特性上、常にピリピリとした空気が漂っていて、人間関係が悪化しやすい環境といえるでしょう。
一度、人間関係が悪化してしまうと、修復が難しいケースも多いです。
薬局やドラッグストアの場合は、仲の悪いスタッフ同士を異動で別の店舗に配属して顔を合わせないようにする、といった配慮で解決することもできますが、急性期病院の薬剤部では、そのような対応はなかなかできません。
他の医療職との人間関係がつらい
医師や看護師など他の医療職との人間関係に悩む薬剤師もいます。
特に、調剤や服薬指導など、医師の指示にしたがって業務を行うため、医師に気を遣わなければいけない雰囲気があり、医師との関係構築に悩みを抱えている薬剤師も多いです。
病院によっては、医師や看護師の発言力が強く、薬剤師はヒエラルキーの下に見られている場合もあります。
「チーム医療に参加したい」という目標をもって急性期病院に就職したのに、会議などでまったく発言を聞いてもらえなければ、疎外感を感じて仕事がつらくなってしまいます。
給与が安い
難易度の高い症例を多く扱い、夜勤や休日出勤もある急性期病院の薬剤師ですが、ハードな仕事であるにもかかわらず、給与はあまり高くありません。
役職のない急性期病院の薬剤師の平均年収は400万円前後ですが、調剤薬局の薬剤師の平均年収は500万円前後、ドラッグストアの薬剤師の平均年収は500万円〜600万円です。
仕事にやりがいを感じていても、他の職種で働く同世代の薬剤師との年収の差にがっかりして転職を考える薬剤師も多いです。
業務内容がきつい
急性期病院という病院の特性上、難易度の高い症例を多く扱ったり、災害の際に被災地に派遣されたりと、薬剤師にも高度な知識と経験が求められます。
スピード感のある判断を求められたり、珍しい疾患に対する知識が必要だったりと病院薬剤師の中でもとくに高度なスキルが必要な職場です。
また、急病の患者や難易度の症例を多く扱うという特性から、現在の医療技術では救えない命、治せない疾患があるという現実に直面する場面も多いのが急性期病院です。
急性期病院は肉体的にも精神的にもハードな職場環境だといえるでしょう。
ライフワークバランスが崩れる
急性期病院の薬剤師は、残業や休日出勤が多く、プライベートな時間を確保するのが難しいです。
投薬、服薬指導、医薬品管理、医薬品情報管理、混合薬剤調整、治療方針会議への出席、抗がん剤投与、手術への立ち会いなど幅広い業務をこなさなくてはなりません。
患者さんの急変や救急搬送などで予定外の仕事が発生することもあります。
家族との時間や趣味の時間など、プライベートな時間も大切にしたい人はつらいと感じることもあるでしょう。
夜勤がある
急性期病院の薬剤師は日勤(8時〜17時)、準夜勤(16時半〜0時半)、深夜勤(0時〜8時)というような3交代制のシフトで勤務することが多いです。
生活リズムが不規則になり、体調を崩してしまう薬剤師もいます。
夜勤は日勤帯に比べると人員の配置も少ないため、調剤過誤を起こさないか、他の医療職からの問い合わせにきちんと対応できるかといった精神的な負担も大きいです。
若いうちは乗り切れても、年齢を重ねるにつれて夜勤がつらいと感じる人も多いでしょう。
妊娠・出産や子育てとの両立が難しい
女性薬剤師では、結婚や出産のタイミングで急性期病院の薬剤師を辞める人も多いです。
急性期病院のように、残業や夜勤のある職場では仕事と子育てを両立させるのは難しいです。
抗がん剤などを取り扱うことも多い急性期病院では、妊娠すると仕事がしづらいというケースもあります。
小さい子どもを育てていると、急な早退や欠勤は避けられませんが、ハードな職場環境である急性期病院では、周囲への負担も大きくなります。
上司や同僚の理解が得られず、冷ややかな目で見られて職場にいづらくなってしまうということもあるでしょう。
薬剤師は、女性が多い職種ではありますが、激務で残業や夜勤が当たり前の急性期病院は、子育て中の薬剤師が働きやすい環境とはいえません。
急性期病院の薬剤師を辞めた後の選択肢
薬剤師として働くことができる職場は急性期病院だけではありません。
急性期病院で多くの経験を積んだ薬剤師は、他の職場でもきっと活躍できるでしょう。
急性期病院の薬剤師を辞めた後の選択肢を紹介します。
別の病院薬剤師として働く
同じ病院薬剤師とはいっても、急性期病院と慢性期病院では業務内容が異なります。
救命救急病棟や ICU、HCU など、急を要する治療を行う施設を持つ急性期病院では、薬剤師にも高度な知識や経験をもとにしたスピード感のある判断が求められますが、慢性期病院では病状の安定した患者さんのケアが業務の中心となります。
夜間の急患の対応なども慢性期病院の方が少ないため、体力的な負担も少ないです。
患者さんの入れ替わりが激しくたくさんの症例をこなす急性期病院に対して、慢性期病院ではひとりひとりの患者さんとかかわる時間が長いという特徴もあります。
病院薬剤師としての仕事は続けたいけど、もう少し体力的、精神的なゆとりをもって働きたいという場合は慢性期病院への転職を検討してもいいでしょう。
ドラッグストアの薬剤師として働く
急性期病院の薬剤師の給与に不満がある方は、ドラッグストアの薬剤師として働くのがおすすめです。
ドラッグストアは営業時間が長くシフト制の勤務となる点や、転勤が多いといった大変な点もありますが、その分年収は高い傾向にあります。
勢いがあり、どんどん店舗展開をしている大手チェーンも多いので、求人も豊富です。
ドラッグストアには、OTC販売をメインで行う店舗と、調剤併設型の店舗があります。
OTC販売をメインで行う店舗では、レジ打ちや品出しなどの業務も行わなければなりませんが、調剤併設型の店舗の場合は調剤業務に専念できる場合もあります。
自分のやりたい業務内容に合わせて求人を探してみましょう。
パート薬剤師として働いてみる
ライフワークバランスを重視したいという方はパート薬剤師として勤務するといいでしょう。
パートで働くメリットは、勤務日数や勤務時間をライフスタイルに合わせて決められることです。
子どもが幼稚園に行っている午前中だけ働く、ライフワークバランスを考慮して週3日だけ働くといったことも可能です。
また、基本的に異動はないため、同じ職場で長く働きたいという方にもおすすめです。
福利厚生や安定性といった面で正社員よりも不利な部分もありますが、自由に使える時間が増えるのはパート薬剤師として働く最大のメリットです。
働ける時間に制限のある子育て中の薬剤師にもおすすめな働き方です。
派遣薬剤師として働いてみる
派遣薬剤師は、派遣会社に登録し、さまざまな職場に派遣されて勤務します。
派遣薬剤師を雇う病院や薬局は、極端に人手が足りていない場合が多いです。
現場で即戦力となることが求められるため、経験豊富な急性期病院の薬剤師は重宝されるでしょう。
一般的にパート薬剤師に比べて時給が高いこともメリットです。
派遣会社に所属するため、大手ドラッグストアと同等の手厚い福利厚生も享受できます。
期間を区切って働くため、人間関係の悩みを抱えづらいというメリットもあります。
合わないと感じたら契約更新せずに次の職場に行けばよいので、気楽に働くことができます。
数か月働いて、数か月休むといったライフスタイルを選択することも可能です。
- いろいろな職場で経験を積みたい
- 高時給で働きたい
- ライフワークバランスを重視して柔軟に働きたい
という薬剤師におすすめの働き方です。
急性期病院の薬剤師を辞める前に行うべきこと
急性期病院の薬剤師を辞める前に行うべきことをまとめました。
- 周囲の人に相談する
- 辞めたい理由を明確にしておく
- 転職エージェントに登録する
ひとつずつ解説していきますね。
周囲の人に相談する
仕事の悩みや辞めたいと思っている理由を、家族や親しい友人などの信頼できる周囲の人に相談してみましょう。
人に悩みを話すことで、自分の抱えている問題やつらいと思う気持ちを整理することができます。
自分とは違った視点から、有益なアドバイスが得られるかもしれません。
気の合う同僚や信頼できる上司がいる場合は、その人に相談してみるのもおすすめです。
同じ仕事をしているからこそ分かり合える部分もありますし、配置転換などの配慮をしてくれるかもしれません。
後悔しない選択をするためには、問題をさまざまな視点で分析することが大切です。
ひとりで考え込むのではなく、周囲の人の意見も参考にしてみましょう。
辞めたい理由を明確にしておく
急性期病院の薬剤師を辞める前に、辞めたい理由を明確にしておきましょう。
- 業務内容がきつい
- 年収をアップさせたい
- 人間関係がつらい
- 他にチャレンジしたい仕事がある
- ワークライフバランスを重視した働き方をしたい
など、急性期病院の薬剤師を辞めたいと思う理由は人それぞれです。
辞めたい理由を明確にすることによって、次の職場に求める条件が見えてきます。
短期間での転職を繰り返さないようにするためにも、辞めたい理由を明確にして、転職活動の軸を決めておきましょう。
転職エージェントに登録する
急性期病院の薬剤師を辞めたいと思ったら、まずは薬剤師専門の転職エージェントに登録してみましょう。
転職エージェントに登録することで以下のようなメリットがあります。
- 転職のプロに現在の求人動向を教えてもらえる
- 自分の市場価値をはかることができる
- 条件を詳しくヒアリングした上で求人を紹介してくれるため、効率よく転職活動を進めることができる
- 職場の人間関係など、求人票からはわかりづらい情報を教えてもらえる
- 年収の交渉など、自分からは言いにくい部分を転職エージェントのアドバイザーが代行してくれる
- 履歴書作成や面接対策などのサポートを受けられる
転職エージェントに登録して、さまざまな求人を見ていく中で、今の職場が自分にとってはベストだと思うこともあるかもしれません。
そういった場合は、転職しないという決断をするのもアリです。
転職エージェントは、応募先の企業に登録者が就職した際に、企業から紹介料をもらっています。
そのため、薬剤師は完全無料でサービスを利用できます。
- 退職すべきか迷っている
- どんな求人があるか知りたい
という場合でも利用できるので、退職を考え始めたら気軽に登録してみましょう。
急性期病院の薬剤師を辞めたい時の注意点
急性期病院の薬剤師を辞めたいときの注意点を3つ紹介します。
- 感情的に退職を決めない
- なるべく早く退職を伝える
- 引き継ぎは丁寧に行う
退職時のトラブルを避けて円満退職するためにも上記3点に注意しましょう。
感情的に退職を決めない
急性期病院の薬剤師を辞めたいと思っているときは、日々の過酷な業務で心身ともに疲れ切った状態です。
すぐにでも仕事を辞めたいと思っているかもしれませんが、そのような状態で「退職」という人生を左右するような決断をするのはNGです。
あとになって「辞めなければよかった」と後悔する可能性があります。
冷静な判断ができるよう、まずはしっかりと休養をとり、心身の健康を整えましょう。
なるべく早く退職を伝える
退職することを決断したら、なるべく早く退職の意思を伝えましょう。
代わりの人員の確保や配置転換が必要になる場合もあるので、退職の2〜3か月前には退職の意思を伝えておくのがベストです。
繁忙期や新人の教育担当になっているときなどは避けた方が無難です。
あまりにも急に退職を申し出ると、引き止めに合ってしまい、退職できないというケースもあります。
引き継ぎや有給消化の期間も考慮して、余裕をもって申し出るようにしましょう。
引き継ぎを丁寧に行う
後任者への引き継ぎは余裕をもって、丁寧に行いましょう。
自分が担当している業務について、引き継ぎ資料を作成しておくのがおすすめです。
口頭のみで引き継ぎを行うよりも確実に内容が伝わりますし、自分が退職したあとに後任者が資料を確認しながら仕事をすすめることもできます。
業務の流れややるべきこと、確認事項をまとめたチェックシートを引き継ぎ資料としてまとめておくと、後任者への引き継ぎもスムーズに行えるでしょう。
まとめ
この記事では、急性期病院の薬剤師を辞めたいと思ったときに後悔しないための対策を解説しました。
- 休養をとる
- 働き方を変える
- 次の仕事を探しておく
急性期病院は最先端の医療にかかわることができたり、難しい症例を扱うことができたりと薬剤師として経験を積むのには最適な環境です。
その一方で、業務は多忙で、高度な知識と経験、スピード感のある判断力が求められるため、薬剤師の就職先の中でもハードな職場環境といえるでしょう。
薬剤師として活躍できる職場は急性期病院だけではありません。
十分に休養をとっても「急性期病院の薬剤師を辞めたい」という気持ちが変わらないのであれば、転職エージェントに登録して他の働き方を検討してみましょう。
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